京町屋の改修現調
2018/01/12
こちらは離れのお座敷。
改めてこう見ると町家ってとにかく壁が少ないなぁ~という印象があります。
建築基準法制定以前に建てられた京町屋はいわゆる「伝統工法」という部類に分けられ基礎はなく石の上に床束や柱が立ち、筋交い等はありません。
そういうと案外弱そうに思われますが、現在でも多くの町家が現存しているのはおそらく建物自体に靭性(粘り強さ)があるからだと思われます。実は建物はこの靭性、粘り強さが大事なんです。あまり聞きなれない言葉ですが「人生(靭性)粘り強く」で覚えましょう(笑)
さてこちらの町家ですが来週には「京都市都市計画局建築指導部建築指導課」の現場調査が控えております。
というのも今回は、、、
「京都市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」の活用にチャレンジする予定です!!
ところで京都市歴史的建築物のなんちゃらかんちゃらって何?ですよね
ものすごく簡単に説明するとそもそも京町屋は建築基準法制定(1950年)前の建物です。なので
増築、用途変更、大規模修繕等がしたい!!
という時に基本的には現行の基準法に適合しなければなりません。
じゃあ適合する様に直せばいいじゃないか!と思いがちですがハッキリ言ってそんなのムリです(笑)
外壁の構造や窓の構造、軒裏、壁量等現行の基準法に照らし合わせるとあれもこれもNGだらけ。もし仮に適合する様に改修しても町家の趣はすべて失われてしまう事でしょう。
そこで「京都市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」の出番です。
これはつまり建築基準法3条の「法適用除外」という手続きになります。
建築基準法3条とは国宝とか重要文化財とかは建築基準法の適用を除外してもいいよん♡という、と~ってもやさしい条文です。
で価値のある京町屋はこの「建築基準法の適用を除外してもいいよん♡」の法3条に仲間入りできるよ!!というなんとも寛容的な条例なんです!!
え?そんなのいつからあったの?
平成24年4月1日から施工されてしますが役所に問い合わせるとこの5年半ほどで条例を活用した物件数は、、、
9軒だけ!!
そうなんです。たった9軒。手続きに時間が掛かってしまうんですね~。町家で飲食店や何か事業を開きたいという方は大体、というかほとんどですがOPEN時期を決めて計画を立てますが、本条例は建築審査会という建築基準法の施行に関する重要事項を調査審議するむちゃくちゃお偉い方々へ「へへぇ~」(←イメージです)とお伺いを立てなければいけないステップがおよそ3回ほどあるというのがミソです。
なのでそこらで見る明らかに町家を改修したお店のほとんどはお察し下さいという事です。
一見面倒そうな制度かと思われがちですがデメリットばかりでもありません。
しっかりと合法的に行う事により胸を張って後世に残せる建物となります。補助金制度もありますしね。
これから少しずつ進捗もご報告できればと思っています。
ではまた次回
伊勢 晋祐
↓ここから先は補足なので読みたい方はどうぞ。読むのがめんどくせーという方は飛ばしてください(笑)
現在京都市内には40146軒の京町屋がありますが、この7年間で5602軒が滅失、さらに全体の約15%の5834軒が空き家という状況です。
高齢者(65歳以上)だけの世帯は35%を超え、子供たちは別の場所に移り住んでいることが多く、相続が発生した際に次世代に現状のまま引き渡すことができるかが課題となり所有者の36%が「できる限り残したい」との思いを持つ一方で、相続税の負担や維持改修費用などの問題点が多くやむなく取り壊すというケースも少なくありません。
ここで京都市は、京町家の保存・活用を図っており、空き家の利用希望者を募集するなど様々な施策を打ち出し、昨年11月には「京都市京町家の保全及び継承に関する条例」(京町家条例)が制定され、市のサポートもグッと大きくなりました。
過去7年間で多くの京町家が取り壊される一方で「京町家に住んだり、店を開いたりしたい」という需要や、京町家への滞在を希望する外国人を含む観光客の需要も多く、京町家の売買仲介、シェアハウスや店舗、宿泊施設などへの改修、運営代行を手掛ける企業が増えてきているのも現状です。
ですが少しずつ町家に対する制度も変わりつつある中でも、悲しい事に営利目的重視で建設業を行っている人たちには何も響かない内容だと思います。だって空いてる土地にバンバン建売住宅を造って売るほうが儲かりますもんね。
私もご縁あって京都でお仕事をはじめたので、このような取り組みには積極的に参加していきたいと思っていますし、京都の街並み、ひいては日本古来の街並みの保存に少しでも関われる事ができるのであればこれほど嬉しい取り組みはありません。